たとえば、こんな些細な事も
俺たちにとっては 重大事件
エマー・ジェンシー
―非常事態―
「皆さん、非常事態が発生しました」
メルヴェの言葉に、リビングにいた全員が顔を上げる。
「非常事態ッ!? マジでかっ!? やったぜハク!暇つぶしが出来た!!」
「狽竄チたじゃないよ! それよりまずは避難しなきゃ!!」
「…非常事態って、どういう事だ?」
双子は、コントローラーを手にあばれている。
ライザの質問に、メルヴェが軽く溜息をつきながら答える。
「…スエアさんが風邪をひきました。高熱でベッドから出られない状態です」
ライムはソファに座りなおす。
その振動でソファがたわんだ。
いつもの面倒臭そうな顔で、読みかけの小説をひらく。
「それの一体どこが非常事態なんだよ」
「スエアちゃん大丈夫ぅ? お医者さんには見せたのぉ?」
「ええ。ニヤさん達は、一晩寝てれば熱も下がると。
しかしライムさん、事態はそう簡単なものじゃありませんよ」
「なんで」
「? 明日には治るんでしょ? 別に風邪位、うちらにうつさなきゃ…」
「違います。問題は、スエアさんがって事です」
思い当たったのか、ライザが唸る。
「……食事か」
その言葉に全員が固まる。
双子の操作していたエアライドマシンが、テレビの中でカーブを曲がりきれずに壁に勢いよくぶつかる。
「そうです。洗濯物は元々少ないですし、掃除も一日位ならどうにでもなるでしょう。
ですが、食事は……」
「カ、カリファなら出来るんじゃないの?」
「無理だよぉ! お手伝いはするけどぉ、野菜切ったりするだけだもぉん! シューリちゃんは?」
「う、うちも無理!! 修行時代は食堂のおばちゃん達が作ってくれてたし、それ以前に、修行途中でここに来たんだから!」
そんな中、一匹のカービィが手を上げる。
「なあなぁ! 出前取っちまえば良いんじゃねぇか? てか、食ってみてぇ」
「無理です。次の公演まであと一週間。既に赤字ぎりぎりです。
とてもそんな余裕はありません。先ほどの診察料だって、値切りに値切ったんですから」
初・出前体験をしてみたいコクレンの提案は、即座に却下される。
「…言っとくけど! オレ等は無理だぞッ!?」
「そうだよっ! ぼく達、今まで料理なんかやったことない!」
「俺も。全部あいつらに任せっきりだったからな」
「おれだってそうだ。姉さんに作ってもらってたし、じじいの所に来てからも
一人のときは大概レトルトで済ませてきたし」
「ここにはレトルトは置いてませんし、私もまともな料理は作ったことがありません」
計算外。
こんな事になるまで、日頃皆が、どれだけまともな家事をしてなかったのかが痛感される。
「と、とりあえずご飯だけでも炊かねぇか? ボタン押すだけだろ?」
「……駄目なのぉ。スエアちゃん、いつも土鍋で炊いてたからぁ…」
「「土鍋っ!?」」
あわててキッチンへと向かうライム。
「あー…。そういえば、前そんな事言ってたわねぇ; なんでも早く出来るんだとか」
「おいっ! ジャーがねぇぞ。炊飯ジャーがねぇぞっ!?」
「なんでも高く売れたんだとか」
「粕рチたのかよ、ぉおいっ!!」
「……こうなりゃ、盗ってくるか」
「もうこの際、ナイスッ! イザちゃん!!」
「ナイスじゃないです。うちを犯罪組織にする気ですか。
……確か、冷蔵庫にうどんがあったと思うので、それで何か作ってきます。良いですか?」
「大丈夫?」
「スエアさんから料理の本を借りてきます。レシピさえあればどうにかなると思いますから」
そのままリビングから姿を消すメルヴェ。
残された一同は、顔を見合わす。
「だ、大丈夫だと思う?」
「激しく嫌〜な予感が…;」
「……同じく」
「………」
危機感の鋭い二人の言葉は
この後的中することになる。
1月29日 晴れ
昨日は突然の熱で、一日中寝込んじゃった;
皆にたくさん迷惑かけちゃったから、今日は夕ご飯ふんぱつしてあげました。
それにしても今日は皆から、これでもかという位、マスクとかうがい薬とか、予防接種の案内をもらったんだけど・・・。
そんなに大変だったのかしら?
end...
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