『本日夜遅くから明日の未明にかけて、
東北の空に流星群が見られるでしょう。
今夜は月も出ないので、はっきり見えると思いますよ』
流星群
「んっふっふ〜、この時期は夜になっても蒸し暑いねぇ」
「夜風はだいぶん涼しいですよ。そんな怪しい覆面つけてるからじゃないですか?」
「そうよヴィッチ、たまにはそれ脱いでみたら?」
「だが、断る」
大きな屋敷が建っている丘の上で、三人のカービィが夜空を見上げる。
町から離れたこの場所には町明かりも遠く、星空が近い。
遅れてやってきた一人も、他の三人と同じように夜空を見上げた。
「うわぁ! 凄いですね! 満天の星空!!」
「んっふっふ〜、そうだねぇ。でも降りて見ないと、バランス崩して落ちるよ?」
「そこまで馬鹿じゃないです!」
「あら、流星群もう始まってるみたいよ?」
「おや、本当ですね」
その言葉に、4人全員が空を見上げる。
視界の端で、小さな光が闇を裂いた。
それもひとつではない。
ふたつ、みっつと光が夜を走っていく。
「んっふっふ〜♪ 綺麗だねぇ」
「あ! お願いごと!!」
「まだそんな迷信信じてるんですか? やっぱり子供ですね」
「むぅ、いいじゃないですか! ヴィッチさんは何お願いしますか?」
「暇」
「働け、ニートが」
「んっふっふ〜♪ そんなフェラディルは、何をお願いするんだい?
アップルとのことかな?」
「んなっ……!?」
急に顔を赤くして口をパクパクさせているフェラディルの横で、
ルシーガルが辺りをきょろきょろ、一人足りない姿を探す。
「そういえば、アップルさんはどうしたんですか? 姿が見えませんけど」
「……まだ実験が残ってるからって、出てきませんでしたよ」
「フェラディル、アップルを呼んでおいで」
「はぁ? なんで私が」
「いいから。次に見れるのは50年後だよ? それまで待たせるつもりかい?」
「……分かりましたよ」
「そうだ! スイカもあるんで、僕切ってきますね」
不満そうに屋敷にきびすを返すフェラディルと、
その後を飛んでついて行くルシーガル。
それを見送ったところで、ヴィッチは珍しく物静かな存在に目を向ける。
「で。君は一体、何をそんな熱心にお願いしてるのかな?」
ひとり手を組み、目を閉じて黙って空を見上げていたエンジュが、
ゆっくりとその目を開ける。
いつもの妖しい色を帯びている目ではなく、
優しさに溢れた瞳をしていた。
「お願いじゃないわ。お祈りよ」
「へぇ?」
「星は死んだ人の心。流れ星は新しく生まれてくる生命。
『新しく生まれてくる者が、幸せでありますように』
『新たな生命に、祝福を。おめでとう』
流れ星は、祈りと祝福の対象よ。小さい頃習わなかった?」
「んっふっふっふ〜。あいにく僕のところでは、
流れ星が消えるまでに3回願い事を言うと願いが叶う、としか聞いたことがないよ」
「あぁ、そういえば貴方達は別世界から来たんだったわね」
組んでいた手を解き、エンジュがこちらをふり返る。
「ねぇ、ヴィッチ。
あなたは、空に大切な人はいる?」
「……んっふっふ〜、どうしてそんなことを聞くんだい?」
「なんとなくよ」
一瞬閉じた瞳は、次の瞬間にはいつも通りの妖しい瞳に変わっていて。
色香漂う笑みに、ヴィッチが一つのアドバイスをする。
「……今日は流星群だからね。ずっとお願いごと言っておけば、一つくらい届くかもしれないよ?」
「寝る寝る寝る寝る寝る寝る」
「うるさいよ」
「ヴィッチさーん! エジュさーん! スイカ切ったんで、食べましょう!!」
「お、なかなかの夜空。流星群もかなりの数が、空を飛んでいるのだな」
「たまには外もいいでしょう? あんな陰気な所にいたらカビますよ、林檎も生モノなんですから」
「カビるわけないだろう! 誰が生モノだ!」
うふふと笑ったエンジュが、ヴィッチの横をふいっと通り過ぎる。
ルシーガルのところでスイカを受け取りながら、再びいつもの笑顔を向けた。
「ねぇヴィッチ、あなたは何をお願いするの?」
「んっふっふ〜、そうだねぇ……」
ヴィッチが答えを言う前に、ふざけ合っていたフェラディルがエンジュにぶつかった。
その衝撃でスイカを落としそうになったエンジュは、
スイカを一口頬張ると、仕返しとばかりに種を飛ばす。
種まみれになったフェラディルが、笑っている三人を追い回しはじめた。
四人ともスイカ片手に、わあわあと楽しそうだ。
「そうだねぇ……、この『暇』な時間がもうしばらく続きますように、かな?」
いつもよりちょっとだけ優しい笑みで、
自らも鬼ごっこに参加すべくみんなのもとへ一歩、踏み出した。
fin...
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