「おぉ〜!」



「んっふっふ〜♪ 見事に咲いてるねぇ」



「きれいだねー」






 言ノ葉
    





「えへへ、すごぉいでしょ〜」

「これ、全部君の仕業かい?」

「矛盾の堕天使ってのはすごいねー。夏の花も冬の花も咲いてるよ」





 三人の目の前に広がる、無限にも見える花畑。

 それはある意味無秩序に、花という花をそこに存在させていた。




「今はボクちんの国だからね〜」

「んっふっふ〜。国じゃなくて、政治の間違いね」

「でもこれはちょっとやり過ぎなんじゃないかなぁ?」



 シダがそういって見上げるのは、一本の桜の樹。

 散り始めた桜の花びらの先には、花畑の中に異様に乱立する様々な樹木があった。




「だってボクちん、矛盾の堕天使だし〜♪」

「桜に銀杏に金木犀に、なぜか南天まであるねぇ……」

「矛盾というより、無秩序だよね。コレ」

「いいじゃ〜ん♪ あ、そうだ」




 一人でたたたっと駆けていくウィティカ。

 黙って見ているだけの二人に、振り返ってこっちこっちと手を招いた。

 ヴィッチとシダは顔を見合わせた後、黙ってその後を追う。

 ウィティカに誘われてたどり着いた先には、一面黄色。



「えへへへ〜、すごいでしょ!」

「んっふっふっふ、一面ひまわり畑だねぇ」

「きれいだねー。でもなんでひまわり?」

「ボクちんが好きだからー♪」




 そう言ってひまわりの中にダイブするウィティカ。

 これまたどういう原理なのか、ひまわりは潰れることなくそこに存在している。




「んっふっふ〜。まぁ確かに、らしいといえばらしいね♪」

「そう? 春運びなのに、これ夏の花じゃん。まぁ矛盾ではあるけど」

「あぁ、そう言う意味じゃなくってねぇ。花言葉だよ♪」
「花言葉?」




 シダが訝しげな顔でヴィッチを見る。

 ひまわりに埋もれていたウィティカも、何だろうと二人に目を向けた。




「ひまわりの花言葉は、『偽りの富、偽金貨、崇拝、あなたを見つめる』」

「うわ、何でそんなこと知ってんのさ。引く」

「んっふっふ〜♪ まあいろいろあってね。そんな言い方するなら、灰にするよシダ」

「ご遠慮願うね」

「おぉー! ヴィッチすごいね〜!!」BR>



 ひまわり畑からぴょんっと跳ね起きたウィティカは、独特の笑顔で首を傾げる。




「じゃあさぁ、二人はどんな花が好きなの?」

「僕? 僕は、そうだねぇ……んっふっふ〜、葡萄とか」
「……それ花っていうの?」

「因みに花言葉は〜?」

「『酔いと狂気』」




 口をゆがませてにやぁと笑うヴィッチは、顔が見えない事でさらに狂って見えた。

 そんなヴィッチを見て、ウィティカもくすくすと、シダはにやにやと笑顔を作る。




「……ねぇー、じゃあシダっちは〜?」

「ぼく? ぼくは、……そうだな。桜とか好きだなー」

「んっふっふ〜♪ 意外といえば意外だねぇ。『精神美・優れた美人』だよ」

「シダっちが精神美しいの? ありえないよー♪」

「まぁ、花言葉だしねー。まぁでもぼくは花言葉というより、花そのものが好きだからねー」

「? どういうこと?」




 首をさらに傾げるウィティカに、にやにや笑ったままのシダは花畑に一本だけ立っている桜の樹に目を向ける。

 満開の桜は、時折吹く風にあおられて、その花びらを三人の元まで舞いあげた。

 風に、思わず目を細めた二人は、シダのいつも以上におかしそうな笑顔を見つめる。




「……だって、あんなに散り際が美しい花なんて、そうそうないでしょう?」






 シダが、そしてウィティカとヴィッチが狂ったように笑ったのを、




 風が、桜を舞いあげて隠した。









fin.




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